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あるカタチ

202506/14
202507/05

土屋未久、中﨑由梨、山本愛子、渡辺千明

MtK Contemporary Artでは6月14日(土)より7月5日(土)まで、気鋭の若手作家によるグループ展「あるカタチ」を開催いたします。

画家 熊谷守一は、自宅の庭の地面に這うようにして昆虫を観察することで、蟻が左の二番目の足から歩き出すことを発見していたという。この逸話は、作家が「世界」をどのように見つめているかを示す象徴的なエピソードである。たとえこの発見が昆虫学的に正確でなかったとしても、重要なのは、このように作家が自らの方法で言語化される前の「世界」と接点を持ち、その経験を作品へと形態化した点にある。

歴史学者 ディペシュ・チャクラバルティは、著書『一つの惑星、多数の世界』において、現代世界を語るうえで二つの「グローブ」の存在を提示している。ひとつは、テクノロジーの発展によって形成されたグローバリゼーションの「グローブ」。そして、もうひとつは、人間的関係に先立つ地球システムとしての「グローブ」であり、チャクラバルティはこれを「惑星」と呼んでいる。
作家が制作を通して見つめる「世界」とは、この「惑星」の片鱗なのではないだろうか。
私たちは、作品という、作者の思考と経験の軌跡によって形態化された「あるカタチ」を介して、人間世界を超えた「惑星」に触れる。そして、その接触において感じる感触を「生の実感」と呼ぶことができるのかもしれない。

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土屋 未久 Miku Tsuchiya
1991年愛知県生まれ。京都精華大学芸術学部メディア造形学科版画コース卒業。
土屋未久の絵画作品に描かれる人物は、植物のようでもあり、動物のようでもある。そしてまた、植物や動物も同様に、人間のような存在として立ち現れる。主体が人間以外の事物へと同化していくその様は、まるで神話の一場面のようでもある。芸術におけるフィクションは、現実から切り離された単なる架空の世界ではなく、むしろ現実を拡張し、その深淵に触れる力を持つ。
主な展覧会に「滲みの間合い」(熊間、京都 、2024)「The process of individual nodes」(node hotel、京都、2024)、「gaze」(PAGEROOM 8、韓国、2023)、「Swimming in the crack of light」(Printed Union、東京、2022)、「物と視点」(kumagusuku、京都、2021)などがある。

 



中﨑 由梨 Yuri Nakazaki
1999年三重県生まれ。名古屋芸術大学芸術学部美術学科卒業後、同大学大学院美術研究科同時代研究コース修了。現在愛知県を拠点に活動。
ビニールという必ずしも描画に適しているとは言えない素材をあえて用い、作品に「不安定さ」を導き入れる。さらに、透明な支持体に裏面から描く手法と表面から描く行為を交差させることで、過去と現在の筆致が画面上で交錯し、観る者に時空間を彷徨うような思考の運動を促す。これにより、過去と未来の接点としての「今ここ」を示唆している。
主な展覧会に「アライブ!展」(BankART Station、神奈川、2025)、「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2025」(京都国立博物館 明治古都館、京都、2025)、「Group exhibition "Volante”」(OFF THE RECORD、愛知、2024)、「ō fuku」(project space hazi、愛知、2022)などがある。

 

山本 愛子 Aiko Yamamoto
1991年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了後、ポーラ美術振興財団在外研修員として中国にて研修。現在京都を拠点に活動。
国内外でフィールドリサーチを行い、土地に根ざした自然の記憶と人の営みが交差する痕跡や風景を、草木染などの染色技術を用いて色彩として記録する。また、その色彩を異なる文脈の色彩と接続・混合させることで、文化的アイデンティティから解放された存在へと昇華させる。
主な展覧会に「往古来今/見えない泉をさまよいさがす」(横須賀美術館、神奈川、2024)、「Arts in KOGEI 螺旋への反転」(SiteA / 有斐斎弘道館、SiteB / 工藝の森、京都、2023)、「ART ROOM produced by GALLERY ROOM•A」(KAIKA東京、東京、2022)、「Under 35 2021」(BankART KAIKO、神奈川、2021)などがある。

 

渡辺 千明 Chiaki Watanabe
1985年京都府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。京都を拠点に活動。
渡辺千明は、旅先の風景や児童が描く絵の中で体験した「ある違和感(核心と呼ぶべきかもしれない)」を起点に、絵画のフォーマットを横断・交差させながら、繰り返しチューニングを重ねていく。その「違和感」の周辺をマッピングし、その所在を手繰り寄せようとする試みは、ラディカルなまでに脱中心的かつ、ノマド的な制作プロセスに貫かれている。そして、その軌跡には、形象し得ない「世界」の感覚が宿っている。
主な展覧会に「旅の絵」(2kwgallery、滋賀県、2025)、「PALALLEL e.g.4」(HANSOTO、静岡、2024)、「やんばるアートフェスティバル2022-2023」(大宜味村旧塩屋小学校他、沖縄、2023)、「memo」(京都精華大学 Kara-Sギャラリー、京都、2019)などがある。

 

press release

展示会名
あるカタチ
会期
2025/06/14-2025/07/05
開廊時間
10:00-18:00 日曜休廊
オープニングパーティー
2025年6月14日(土)16:00-18:30
作家名
土屋未久、中﨑由梨、山本愛子、渡辺千明
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