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猫とマチエール

202111/13
202112/26

薄久保香、大田黒衣美、西村有未、土取郁香

絵画が物語の魔法から解放され物理的なものとして現れた時、そこには、艶かしいマチエールがあった。マチエールを見る行為は視覚による思考を誘発する。
象徴的な図像と物質としての絵肌、この同時に認識する事ができない2つの異なる次元を往来するその間に現実界の「秘密の裏側」が隠されている。

西村有未、土取郁香の絵画には抽象化されたモチーフが登場する。
西村は形而上の存在の描写を試み、生み出された図像とマチエールは見るもののプライマルな衝動に訴えかける。
土取の絵画に表れる人物の形体は曖昧で、絵具やスプレーなどのメディアに溶けていく。何も表象しない絵具に鑑賞者は自分だけのディテールを見つけ、図像との関係性を築いていく。

薄久保香、大田黒衣美の平面作品は私達の記憶や想像の中にある質感に訴えかけ、脳内でコラージュ作品を完成させる。
薄久保の作品は3次元空間を作品の中に作りながら、そこに平面性を感じさせる厚紙や折紙・写真等を立体的に折り曲げたり重ねたりする事で3次元を示唆するメタファーとして登場させる。現実世界(3次元)と絵画世界(2次元)の関係が入子状に設定され、画面のメタレベルにマチエールを出現させる。
大田黒の写真作品《sun bath》のシリーズは、猫の背中に人体のカタチに切り抜かれたレリーフ状のガムが配置されている。ガムと猫の背中はマテリアルとして扱われ、馴染みのある質感ではあるものの、普通ではまずありえない組み合わせに軽い立ち眩みを感じながら、僅かな時間しか成立しえない造形物の表象の中と外を往復することとなる。

萩原朔太郎の著書『猫町』にこんな一文がある。"私は昔子供の時、壁にかけた額の絵を見て、いつも熱心に考え続けた。いったいこの額の景色の裏側には、どんな世界が秘密に隠されているのだろうと。私は幾度か額をはずし、油絵の裏側を覗いたりした。"(1997年 パロル社出版 萩原朔太郎 『猫町』26-27ページより引用)本展覧会にお越しになり作品をご覧になられた時お気付きになるだろう、秘密は作品の裏だけでに隠されているわけではない事に、まさに目の前の表面にも隠されている。『図像とマチエール』、『猫とマチエール』の間に。

展示会名
猫とマチエール
会期
2021/11/13-2021/12/26
営業日
10:00-18:00
休廊日
月曜日
協力
KAYOKOYUKI
作家名
薄久保香、大田黒衣美、西村有未、土取郁香
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