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inspired by ANDY WARHOL KYOTO

202209/17
202210/09

SHUN SUDO, Paramodel ・ Yasuhiko Hayashi, Nanae Mitobe

Photographed by Shinya Kigure

「ぼくの絵や映画やぼく自身の表面を見れば、ぼくがいるんだ。その裏なんてなにもないよ(1)」とアンディ・ウォーホルは言った。ウォーホルは、その表面以外のどこにもいない。本名は、アンドリュー・ウォーホラ。チェコスロバキアからアメリカに移民してきたルシン人の両親をもち、ニューヨークに移るまでピッツバーグのルシン人居住区で育った。母親とはチェコ語と英語の混合語で話す、熱心なカトリックだった。

その後、彼は名を「アンディ・ウォーホル」へと変えた。名前のみならず、鼻に整形手術を施し、銀色のかつらを被り、サングラスをかけ、話し方、ふるまい方を、無個性で中性的に見えるものへと変えた。重要なのは、そこでウォーホルが、まさに自身の操作可能な表面(「ぼく自身の表面」)に改変を施すことによってつくられたということである。ウォーホルとは、過去の自分を隠蔽・改変すべく、ウォーホル自身によってつくられたものである。

その意味で、アンディ・ウォーホルという存在は、彼自身の作品なのだ。ウォーホルのポップ・アートとは、まずなによりも主体の改造に関わっていた。そこで主体は、あくまで空っぽで、徹底的に受動的で、空虚な存在に留まる。それは、「新たな生の様式」の開発である。

だが、そこにおいてこそ、ウォーホルの多産性が開始された。主体を空無化することにより、あらゆるものを受け入れ、機械のように動き、作者と他者の区別がなくなったかのように集団で制作する、ウォーホルの特異な制作主体としての姿が現れる。

ウォーホルという新たな生の様式は、タイム・ベースドなメディアである音楽や映画と視覚芸術、主体と他者、男性と女性、マジョリティとマイノリティなどの二項対立的な要素のすべてを交配させる。このようなアイデンティティ=同一性の破壊のなかに、ポップの過激さがあるのだ。

この「inspired by ANDY WARHOL KYOTO」展を構成するのは、ポップ・アート的な主題というよりも、さまざまな同一性、二項対立を突き崩しながら突き進む、イメージの漸進性、ドライブである。⽔⼾部七絵、Paramodel・Yasuhiko Hayashi、SHUN SUDOの作品は、その運動性においてこそ、ポップの遺伝子を受け継いでいる。ウォーホルは「ぼくの絵に対する本能は「考えないのが正しい」というもの(2)」だと言った。考えてはならない。このイメージのドライブにギヤを入れ、より過激に加速するために。

 

(1)アンディ・ウォーホル『ぼくの哲学』落石八月月訳、新潮社、190頁。

(2)同上、199頁。

|SHUN SUDO | 

1977年、東京生まれ。世界を旅しながら得た感性をもとに独学でアートを学ぶ。筆を使わず紙やスプーンを用いて描かれた繊細なタッチと、アメリカのストリートカルチャーや日本のアニメーションからインスピレーションを受けたポップなモチーフや色彩が綯交した作品が注目を集める。2015年、NYでの個展を皮切りに国内外で意欲的に展覧会を開催。グローバル企業とのコラボレーションも多数手掛ける。近年の展覧会に、「Palm Beach Modern + Contemporary」GR Gallery(フロリダ、2022)、「The mural project-Let’s Spring」Seibu Shibuya(東京、2021)、「Patio」東京エディション虎ノ門(東京、2021)、「PRIDE ART 2021」Clifford Chance(東京、2021)など。主なプロジェクトに、「ART IN THE PARK」Ginza Sony Park(東京、2022)、「Taycan Soul Canvas」複数会場(東京・名古屋・大阪、2022)、「Olympic -TOKYO 2020-」オリンピック会場(東京、2021)など。

 

|水戸部 七絵|

神奈川県生まれ。2011年名古屋造形芸術大学造形学部洋画コース卒業。 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画在籍。2022年ウィーン美術アカデミーへ交換留学。一斗缶に入った油絵具を豪快に手で掴み、ダイナミックな重厚感のある厚塗りの絵画を制作する。主な展覧会に、「Let’s Have a Dream ! -作品集出版記念展-」銀座蔦屋書店(東京、2022)、「project N 85 水戸部七絵|I am not an Object」東京オペラシティ(東京、2021)、「VOCA展2021」上野の森美術館(東京、2021)、「私は生まれなおしている─令和2年度新収蔵作品を中心に─」愛知県美術館(愛知、2020)など。

 

| Paramodel ・ Yasuhiko Hayashi|

1971年、大阪生まれ。デザイナーを経て、2001年京都市立芸術大学構想設計専攻卒業。2001年よりアートユニット「Paramodel」として活動を開始し、2017年からソロ活動を行っている。東大阪の町工場で生まれ育った背景から、大量生産されたユニット性のある工業製品を用い、独自のルールに基づいて拡張性をテーマにしたインスタレーションや絵画、映像などを制作する。

主な展覧会に、「ART021 SHANGHAI」(上海、2020)、「Relay to Tokyo—Inheriting and Gathering, an exhibition of contemporary art from Japan」ビザンティン&クリスチャン博物館(アテネ、2020)など。

本展覧会は、2022年9月17日(土)より京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」にて開催される「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」展との連動企画です。

展示会名
inspired by ANDY WARHOL KYOTO
会期
2022/09/17-2022/10/09
作家名
SHUN SUDO, Paramodel ・ Yasuhiko Hayashi, Nanae Mitobe
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