代々引き継がれた文献を基に織りや染めなどの染織技術に着眼し、復元と創作を行っている着物工房の制作統括として活動してきた山田晋也は、これまで数々の歴史的な重要染織品の制作に携わり比叡山延暦寺を始め数多くの寺社に作品の奉納を行ってきました。

東洋の伝統的な美学を引き継ぐ中で、静寂の持つ重要性を再発見し、2015年頃より染色工芸技術を使った独自の技法で、深く瞑想的な絵画作品の制作を始め、その作品は、国内だけでなく、フランスやスイス、オーストリアなど国外でも高い評価を得ています。

本展覧会のタイトルである「Kṣitigarbha/クシティガルバ」は、サンスクリット語で地蔵菩薩、または「大地の胎内に帰依する」という意もあり、芸術作品が本来持っていたアウラの回復、礼拝的価値の復興の試みでもあります。幾つものレイヤーを纏うように絹本に、岩絵具で描かれた山田晋也の作品のその画面の奥に何かを見出そうとするとき、そこに観者は自身の中にある原初的な風景を観るのかもしれません。

山田 晋也｜1974年京都生まれ。2015年頃より染色工芸技術を使った独自の絵画作品の発表を始め、深く瞑想的な作品が近年 国内外で高い評価を得るようになる。主な展覧会に「うちにあるもの ‒Representation」両足院 (京都、2022)、『Pulse of Silence』COCON KARASUMA (京都、2021)などがある。