ゆだねながら語りあうこと/響き合う思考法
新⾥明⼠ 、多和⽥有希 、川端健太郎 ゲスト出展:⻤頭健吾
アーティストはそれぞれの表現を確立していく過程で、独自の方法論や思考法が確立されていくことは必要不可欠である。だが、それは扱うマテリアルやメディウムによって大きく影響される。そのため、画家には画家の、陶芸家には陶芸家の、写真家には写真家の、思考の仕方が生まれていく。
例えば、絵画であれば自らがメディウムを乗せ、自身の手によってそのイメージを形成していく。しかし、写真は真逆に感光という現象に委ねてきた。アングルを決め、状況設定をしても、最後には光と感光材に委ねなければならない。この委ねる、という点においては、陶芸も通ずるものがあるかもしれない。素材を選び、それを成形するが、最後には窯の中の出来事に委ねなければならない。熱によってどのように素材や釉薬が変質していくのか、計り知れない部分がどうしても生じる。
この展覧会は、陶芸と写真といった全く異なるメディウムを扱いながら、共通性と差異が交差しながら、互いの思考法を交換する場になるのであろう。白磁を用いて器などを制作する一方で、ひび割れなど――つまり用を失った物の情緒を表現に取り込む新里明士。多様な釉薬やさまざまな素材を用いて大胆な造形をしながらも、窯入れの先に生まれる造形を楽しむ川端健太郎。そして、フィルムを消しゴムでスクラッチし、現実世界を写し取ったイメージに独特の揺らぎを与える多和田有希。それぞれの扱うメディアは異なる。それゆえに互いの思考法から生まれてくる問題意識は多様であろう。だが、制御しきれないものに委ねながらも、自身の表現へとにじり寄ってきた三者の語らいが作品を通して聴こえてくる場となるであろう。
文章:山峰 潤也
Photo by Kenryo Gu
新里 明士 | Akio Niisato
1977 年千葉県生まれ。2001 年多治見市陶磁器意匠研究所修了。2011 年文化庁新進芸術家海外研修制度を受け、ボストン・アメリカにて活動。現在、岐阜県土岐市を拠点に制作。近年の主な展覧会に、「未来へつなぐ陶芸-伝統工芸のチカラ展」パナソニック汐留美術館(東京/2022)、個展「均衡と欠片」Yutaka Kikutake Gallery(東京/2021)、「近代工芸と茶の湯のうつわ-四季のしつらい-」国立工芸館(石川/2021)、「No
Man’s Land-陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先-」兵庫陶芸美術館(兵庫/2021)、「DOMANI・明日展 2021」国立新美術館(東京/2021)など。
川端 健太郎 | Kentaro Kawabata
1976 年埼玉県生まれ。1998 年東京デザイナー学院陶器科卒業。2000 年多治見市陶磁器意匠研究所修了。現在、岐阜県を拠点に制作。
近年の主な展覧会に、個展「Yours truly」High Art Paris(パリ/2022)、個展「凸凹Bumpy」Nonaka-Hill(ロサンゼルス/2021)、個展「Knee Bridge」現代美術艸居(京都/2021)、「Emblazoned World」Bel Ami(ロサンゼルス/2021)、「See Change」Ratio 3(サンフランシスコ/2021)、「Vessels」Sized(ロサンゼルス/2021)など。
多和田 有希 | Yuki Tawada
1978 年静岡県生まれ。2005 年ロンドン芸術大学キャンバウェルカレッジ写真学科卒業、2011 年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程修了。現在、京都芸術大学准教授。京都を拠点に制作。
近年の主な展覧会に「デジタル・オーガニック」アンテルーム京都(京都/2021)、「第12 回恵比寿映像祭 時間を創造する」東京都写真美術館(東京/2020)、「ウィリアム・クラインと22 世紀を生きる写真家たち」21_21 DESIGN SIGHT(東京/2018)など。
- 展示会名
- ゆだねながら語りあうこと/響き合う思考法
- 会期
- 2022/05/03-2022/06/05
- 協力
- Yutaka Kikutake Gallery
- 作家名
- 新⾥明⼠ 、多和⽥有希 、川端健太郎 ゲスト出展:⻤頭健吾