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法貴信也

202505/10
202505/31

Courtesy of Taka Ishii Gallery/©️Nobuya Hoki

MtK Contemporary Artでは5月10日(土)より5月31日(土)まで、京都で制作を続ける絵画作家 法貴信也による個展を開催いたします。本展では、2024年から本年にかけ制作された最新の絵画作品が発表されます。この機会にどうぞご高覧ください。

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果てしない探求  ―法貴信也の新作展に寄せて

「表面に付けられる最初の一筆がその物理的な平面性を破壊する」(C・グリーンバーグ「モダニズムの絵画」)、つまりその一筆とカンヴァス面のあいだに1枚のレイヤーが発生し、全体は単なるカンヴァス面から、「画面」というイリュージョンへと転変する、と。絵画の本質はこの「平面性」(イリュージョンを支える基盤面としてのレイヤー)だという「フォーマリズム」に対抗して、描かれた内容(ジェンダー、マイノリティ、トラウマ…)の「意味」を持ち出しても、それでは土俵を変えているだけで、フォーマリズム批判にはならない。実際、描かれたものにある種の「意味」(関係性:具象、奥行き、対称性、反復、記号など)を認知すれば、その意味が「図」となって、「図」と「地」のあいだにレイヤーが生じる。要素Aと要素Bの落差から発生するレイヤーと、ゲシュタルトの認知から発生するレイヤーである。絵画が、薄く厚く塗り重ねられた物質(絵の具)ではなく、絵画的イリュージョンとなるためには、レイヤーと化すしかないのだろうか?そんな馬鹿な。では、それを本質としない絵画とはいかなるものか?これが法貴信也の探求である。その探求は、紙の上に線を引く、つまり黒鉛筆の「最初の一筆」から始まった。色彩はその黒をクロマトグラフィー的に分割した、暖色系と寒色系の2色が基本となっている。2色は並走する2本線として画面を分割したり、別々に滲んでそこに空間を発生させる、と同時に画家は、2本線を逆になぞることで中空の管のようなイメージに変化させ、滲みによる空間を拭き消し、また、いたるところで出現しようとする具象(顔や動物のイメージ)を中断する。レイヤーの発生とその阻止が、画面の至る所を流動化させ、宙吊りにするので、作品を見渡すとか見終わるということがない。かつて電子音と初めて遭遇したシュトックハウゼンは、「たった一つの音の中に何というカオスが潜んでいることか」と叫んだが、画家は、たった一つの線の中に豊かなカオスを探り当てるのだ。絵画は巷に溢れているが、そんな画家は数えるほどしかいない。

清水 穣

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法貴信也 | Nobuya Hoki

 1966年京都生まれ、京都市在住。京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。
主な展覧会に、「美術にまつわる5つの話-いつもそこにある-」岡崎市美術博物館(愛知、2022 年)、「ASSEMBRIDGE NAGOYA 2017」旧名古屋税関港寮(愛知、2017 年)、「蜘蛛の糸」豊田市美術館(愛知、2016 年)、「キュレーターからのメッセージ 2012 現代絵画のいま」兵庫県立美術館(兵庫、2012 年)、「肌理と気配-Textures」 国際芸術センター青森(青森、2012 年)、「絵画の庭」国立国際美術館(大阪、2010 年)などがある。

プレスリリース

展示会名
法貴信也
会期
2025/05/10-2025/05/31
営業時間
10:00-18:00
(5月10日は16:00開廊)
レセプションパーティー
5月10日(土)17:00-19:00
協力
Taka Ishii Gallery
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